「ええっ、随苑から車で西城公園まで行ったって言うんですか? まさか。さっき言ったように、車で行きましたが、真っすぐ家に帰って寝ました」
「でも、それは誰も知らない。誰かそれを証明してくれるといいんですが」
それを聞いた田代は、いよいよ憤慨したように言った。
「そんな。そもそも誰ですか、私を見たって言う人は。その人に会わせて下さいよ。はっきりさせましょうよ。その人に会わせて下さい」
宇佐見はこのタイミングだと思った。
「そうですか。それでは、これを見て下さい。これはあなたじゃないですか? 田代さんですよね」
防犯カメラに映った男の写真をテーブルに置き、突きつけるように田代の方に押し出した。宇佐見はもちろん、書記役の佐伯も、写真を見た瞬間の田代の表情を凝視していた。
田代は、写真を見た瞬間、間違いなく驚愕の表情を見せた。しかし、それはほんの一瞬のことだった。
その表情の変化が本当であったかどうか、後になって二人が確信を持てなくなったほどの短い時間だった。すぐに落ち着きを取り戻した様子の田代は、写真を取り上げるとしげしげと写真を見た。
「これが私? 全然違うじゃないですか。眼鏡をかけているし髪型も」
宇佐見は、田代のその声になにか動揺の響きがあるように感じた。
次回更新は5月22日(木)、22時の予定です。
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