【前回の記事を読む】通関手続き、北側との初めての「闘争」。そして国民はミサイル発射のニュースを知らず、朝鮮中央通信にも目を通さない
第二章 一九九八年 秋
九月十六日(水) 晴
初めてのGBとの会議
四時間弱にわたるKOKと軽水炉対象事業総局(GB)との協議は、双方がほんの一瞬感情的になった場面はあったものの、全般的に和やかな雰囲気での意見交換の場となった。
なお、当方からは主として米国代表が発言し、必要な場面で李(イ)代表が補足説明をする形で進行した。私は初めての北側との会議出席でもあり、慎重を期して発言を控えた。会議の概要は次のとおり。
(一) 冒頭発言
(KOK)GBの協力で野菜栽培や地元住民の統制がうまくいっていることに感謝。但し、サイト内の秩序と治安の維持は議定書にあるとおりKEDOが責任を持って行うこととなっていることに留意願いたい。
(GB)昨年十月に合意したとおり、現地で解決できることはNYや平壌に報告せず現地で討論することにしてほしい。議定書等の条文解釈は工事の進捗状況と密接に関係している。サイトはその使用目的に添って使ってほしい。本格的工事の早期に着工を切に希望する。
(二) 海岸へのアクセスとその利用
(KOK)我が方労働者の余暇活動に制限があることを理解してほしい。
(GB)工事が一向に進まない現時点では、国防上の問題もあり釣り等工事に直接関係のない目的で海岸を使用することは控えてほしい。
しかし、KOK側の事情も理解できるので、ゲストハウス前の海岸を開放することとした。住居地域前の海岸は工事開始後十四カ月で開放することになっているが、今後の工事の進捗状況を見て検討したい。
(KOK)KEDOとしては、そのような条文解釈には同意できない。法的問題は違うレベルで議論することとし、実践的な問題を協議したい。
(三) 通関手続き
(KOK)海洋調査船団が陽ヤンファ化港を出港する時に北側税関職員による必要以上の手荷物検査があったが、禁制品所持の疑いが濃い場合を除いては手荷物を開けないでほしい。関係当局に善処を指示してほしい。
(GB)関係当局に要請する。但し、八月一日付のKEDO書簡は事実関係を間違って理解している。海洋調査団団員一名(朴(パク)某)が我が国を誹謗する十名分の感想文を所持していたので、組織的なものと見てこれを押収したまでだ。KEDOの名の下にこのようなことが再発しないよう望む。
(KOK)税関職員に議定書等をよく読むように指導してほしい。我が方も禁制品を持ち込まないように関係者に徹底周知したい。但し、感想文は禁制品ではないはずだ。
(四) 警備員詰め所(検問所)
(KOK)住居地域横のコリドー内に北側の警備員詰め所や遮断装置を設置し検問するのは明確な議定書違反であり合意できない。
(GB)検問所(チェックポイント)は、双方協議の上設置できることになっており、住居地域前の検問所の設置場所についても昨年九月に原則的に合意したはずだ。検閲は、たとえばナンバープレートが不明瞭な車とか怪しい人物とかがいる場合に限定的に行うものである。
(KOK)他の場所については反対はしないが、住居地域前のみ合意はできない。但し、すでに建設された詰め所の解体や移転までは要求するつもりはない。
(GB)遮断装置設置については再検討したい。