「どういうことですか?」

堺の説明を聞いて、植村管理官が尋ねた。国枝和子が使っていたと社員から証言のあった携帯電話は、犯行現場から発見されなかった。

その携帯電話には交友関係など有力な情報が入っていると考えた捜査本部は、主要な通信会社に国枝和子が登録した携帯電話を照会し、スマートフォンのキャリアを特定した。

直ちに、この携帯電話とさらに自宅の固定電話の通信履歴の保全要請が行なわれ、急ぎ用意された捜査令状で送受信記録の解析が既に進められていた。

「それにつきましては、私の方から説明します」

堺が配属されている班の班長を務めている草薙(くさなぎ)篤志だ。警視庁刑事部捜査第一課で宇佐見と次期エースの座を競い合っている。

長身でがっしりとした体型の宇佐見とは対照的に、中背細身でスマートな体型だ。一重の優しそうな目をしており、顔立ちも強面の宇佐見と対照的なイケメンの部類と言っていいだろう。額にかかる前髪を掻き上げながら立ち上がった。

「国枝和子の携帯電話には、事件当日であります一月六日の交信記録も多数残っていました。プライベートのものも二、三あるようですが、大半は仕事上の事務連絡と思われ、今のところ特に怪しいものは見つかっておりません。

最後の受信が二十時三十三分のメールで、三十五分にガイシャの国枝から返信がされています。これは旅行予定確認のための事務連絡です。送信者は親しくしていた旅行業者で特定も出来ており、送信者本人からも確認が取れております。

従って、国枝はこの時点ではまだ生存していた。このことを考えますと、飯島めいは八時四十八分にマンションの玄関を出ておりますので、国枝の部屋を出たのは四十五分前後。飯島の犯行とすると犯行時間はわずか十分程度しかなく、まず無理かと思われます。

もちろん、飯島が共犯者として国枝和子の殺害に関わっていた可能性もありますので、依然、被疑者の一人に加えております」

次回更新は5月15日(木)、22時の予定です。

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