【前回の記事を読む】「出版社に持っていけば高く売れる。5000万でお前のご両親に買ってもらってもいいよ」「よこせ!」デジカメを取り合っていたその時…
箱入り娘
大学の帰り道、ずっと気になっていた店があった。町の小さな本屋なのに、けっこうお客さんが入っている。そして、その店では万引きもほとんどないらしい。
僕は本をあまり買わなかったので、その本屋に足を踏み入れることがなかったが、たまたま欲しい本ができたため、この気になっていた本屋で購入することにした。お目当ての本をレジに置き、お金を支払うと、緑のエプロンをした老店主が三角くじの箱を僕の前に差し出した。
「今、500円以上ご購入の方に、くじ引きのサービスをしています。ひとつ引いてください」
僕はレジの老人に言われるがまま、四角い箱の中の三角くじを引き、そのくじを開いた。中には『箱入り娘』と書かれていた。
(なんだこれ?)
『箱入り娘』の文字に疑問を抱きながらも店主にくじの紙を差し出すと、老人は微笑んで後ろの棚から薄いピンクの箱を取り出した。
「よかったですね。いいもの当たりましたよ。これ、箱ティッシュです。女の子が描かれているので、割と評判がいいですよ」
そう言ってビニール袋に本とピンクの箱ティッシュを入れ、僕に手渡した。その袋を手に、僕は(なんだ、ハズレのティッシュか)と思った。その後の僕は、商店街を回って夕飯用のお弁当や飲み物、お菓子、乾電池などを買ってから自分のアパートに戻った。
アパートの部屋でテレビを見ながら夕飯のお弁当を食べ、炭酸水を飲んでから、買ってきた本の入ったビニール袋に手を伸ばした。袋の中の本を出そうとした僕の手が、本ではなく箱に手が触れたとき、くじで当たった箱ティッシュを思い出した。ちょうどティッシュも必要だったため、僕はもらったティッシュを袋から出してみた。