知之は、大阪に帰った。今の会社で車椅子で仕事をすることに心配はない。周囲の理解が得られそうだからである。
しかし、試飲会プロジェクトで得た達成感を、今度は、故郷で味わってみたい。知之の希望と夢は、故郷での地域貢献に向けられていく。
知之の自宅に、邦夫と咲が訪れている。二人は、知之の表情から〈なんかつきものが落ちたみたいだ〉と感じていた。
「俺、田舎に帰ろうと思う、故郷で出直すよ」
「知、もう決めてしまったんだなあ、表情でわかるよ」
「うん、もう決めてしまった! 変えることはないよ」
「知之君、そうなのね、寂しくなるけど賛成するわ。今の表情を見てるとそれがいいと思うもん」
「ところで、邦、告れたのか?」
「いやまだだ」
「ここでどうだ、俺も見届けたい」
邦夫は突然真顔になり、咲を見つめた。
「なによ、突然」
「咲、俺と付き合ってくれ! ずっと咲が好きだ」
咲はやさしい眼差しで「ありがとう。嬉しい! よろしくお願いします」と答えた。
邦夫は「よかった!」と喜びを爆発させている。
「ありがとう咲、邦、幸せになれよ」知之は、二人を心から祝福している。
「今度は俺が史に病気のことと、溢れる気持ちを伝える番だな、でもそれは永遠の別れを意味するんだよな」知之は、その日を二週間後と定めた。
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