「何だ、野菜ばっかじゃん! 肉とかないのかよお」
「当たり前よ! 美容食だもん。野菜とフルーツをいっぱい食べて美しくならなきゃ!」
アキオは、ふてくされた顔でうつむいた。
「どうでもいいよ……」
ナツは、両手を腰に当てた。
「あんたがどうでもよくても、私達、美しい女性陣には重要なことなんです!! それより、あんた、男らしさのかけらもないくせに、食事だけは肉食なの?」
ナツは、アキオの顔を覗き込んでニヤリとした。アキオは、ナツの顔をにらみつけた。
「フン! 何が美容だよ! ナツ姉ちゃんなんかが、いくら頑張ったって無駄だよ!」
「ちょっと、それ、どういう意味よ!」
「トイレをいくら綺麗に磨いたって、便所は便所だろ?」
「ま! 何ですって!!」
ナツは右手のこぶしを振り上げた。アキオは、逃げ出す体勢をとった。
「二人とも、やめなさい!! でも、食糧は配給制になっていると言うのに、こんなに沢山のお野菜や果物どうしたの?」
ナツは嬉しそうに答えた。
「ああ、そういうことね? 実は、ボチャロフさんご夫妻が下さったの」
庭のほうから、いつの間にか、ロシア人の夫婦が覗き込んでいることに、ハルは気付いた。
「やあ、ハルさん、お久しぶり!」
「ボチャロフさん! それにカチューシャさんも!」
本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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