関西ハウス販売では、入社から半年間は先輩社員に同行営業してもらい、それ以降は一人立ちさせられる。飲みこみが早い人はすぐに契約するが、竹下はまだ契約を上げられていないのだ。

竹下は、「申し訳ございません」と謝りながら頭を下げている。彼は気が弱いのか、先輩や上司と話すときはいつもオドオドしている。

そこからしばらく、気持ちで負けるな、貪欲になれと、竹下は散々に詰められた。僕は彼が可哀想だと思った。

朝礼が終わり、僕は武田支店長に言われた通り、一番の会議室に入った。

月初の朝礼後に呼び出されて良い話が出るわけがない。どんな話をされるのかと緊張しながら待っていると、五分ほどして武田支店長が険しい表情をしながら会議室に入ってきた。

白いストライプが入った黒のスーツ、髪形はジェルでオールバックにしてまとめてあり、口元には綺麗に整えられた髭が生えている。

それでいて清潔感を感じさせる雰囲気を持っていた。噂では、元々はサラ金の支店長をしていたらしい。

「斎藤、最近調子はどうだ」支店長が深刻そうな低い声で聞いてきた。

「……すごく悪いです。二カ月ノーセールが続いてしまい申し訳ございません」

「今月、契約の見込みはあるのか?」

「いえ、今のところ全くありません。昨日反響のあったお客様が今週末案内予定になっていますが、新規顧客なので会ってみるまでわかりません」

「そうか」