作者は里で相手に語りかけるように日記を書き、手紙という手段で送ったと考えられる。このような長い日記を書き送ったことから考えても、日記の相手は、作者が心から尊敬し信頼する人であると思われる。日記の中で、作者は次のように相手に語りかけている。

つれづれにおはしますらむ。またつれづれの心を御覧ぜよ。また、おぼさむことの、
いとかうやくなしごとおほからずとも、書かせたまへ。見たまへむ。(二一一)

日記の相手は、寛弘六年の春のころに、「つれづれにおはしますらむ」と言われる人である。作者は相手に、自分の書いた日記を読んでくださいと言い、相手に何か書いてくださいと頼んでいる。作者は日記の中でこう言っていた。

はかなき物語などにつけて、うち語らふ人、おなじ心なるは、あはれに書きかはし、すこしけ遠きたよりどもをたづねてもいひけるを、(一六九)

日記の相手は、作者と手紙や作品を書きかわす「おなじ心なる」人であり、古くからの物語仲間であったと考えられる。

日記は、書き送られているが、明らかに一つの作品として意識されていた。作者は寛弘五年八月に、長い日記を書く決心をしてこの冒頭を書き起こしたと考えられる。長く書かれたことは、寛弘六年正月まで書かれた日記自体が証明している。

 

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