慎ちゃんはドミニカに来るまで一度だけ、日本でバナナを食べたことがあります。それは、慎ちゃんが肺炎で長い間入院したとき、おばあちゃんがお見舞いに持って来てくれたのです。
そのときのバナナの味と、かんだときにグニョとした感しょくはそう簡単に忘れるものじゃありません。そのおいしかったこと!
慎ちゃんはまたいつか食べられると楽しみにしていたのですが、病気が治って家に帰ったので、そのあと、おばあちゃんがお見舞いに来てくれることもなく、とうとう、何年も食べていなかったのです。
そんな貴重なバナナが、一本ではなく、目の前に何本もふさになって!
バナナの皮をむいて、ゆっくりかみました。夢の中にいるようでした。あのときのバナナよりもず〜っとあまくてやわらかく、とろけるようで、口の中にフアッと独特な味が広がっていきます。
「うああ、バナナっておいしいねえ」
生まれて初めて食べた譲二ちゃんが言うと、
「おいしいねえ」
まち子ちゃんがまねます。
その日の午後、峯家のラ・ビヒア(コロニア)第一日目は、いっしょにドミニカに来た第四次の家族のみんなとともに、コロニアの南角にある集会場に行って、ドミニカのえらい人たちの歓迎の演説や、日本大使のお祝いの言葉を聞いて終わりました。
そして、子どもたちの楽しくて不思議な冒険はすぐつぎの日から始まったのです。
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