夜の冷気にあたって、
しぼんで頭を伏せていた小さなダンテ
ようやく立ち直り、
「私を助けてくれるよう尽力してくれた情け深いお方、
また、そのお方の言葉を聞いて
恐れおののき即座に服従してくれたあなた
あなたの話を聞いて、崖に突き落とされるかもしれないが行ってみよう
という気持ちが、好奇心が強く心に沸き立ちました
決心がつきました
さぁ、行きましょう、今行きましょう
あなたが先生、あなたが親父」
こう私は彼に言った、
そして彼が先導し、後ろについて、
険しい苛烈な道へ我々は突き進んだのだ
第三歌
ウェルギリウス(父)とダンテ(息子)は地獄の門にさしかかる。その門にはこう書いてある。
「この門をくぐる者は、一切の希望を捨てよ」
─うわっ。嫌すぎるやないか!
門の中では生前どっちつかずで、何も積極的に行動しなかった人々の亡霊が、虻や蜂に刺されて、泣きながら走り回っている。まさに虻蜂とらず!
三途の川ことアケロン川※2にさしかかるとそこへ、地獄の渡し守カロン※3が、舟を漕いで近づいてきてダンテを怒鳴りつける。
地獄墜ちの連中はその舟に乗って暗い波を渡っていく。ダンテはそこで昏倒するのであった。
「彼の国に行こうとするなら俺をくぐれ」
「永遠の責苦に遭いたいなら俺をくぐれ」
「破滅の帝国を作った俺をくぐれ」
「正義は愚かな民を動かし」
「地は、底は」
「大工が我を造る」
「我が前に造られた門なし」
「ただ無明あり、我は無明を強いる者なり」 「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」