3 固体の中の宇宙

月に何人かの方のカウンセリングを引き受けている。

会社の指示で来室される方が多く、そうなると本来のカウンセリングではないので、ほとんどの人が怪訝な顔で来室される。

そりゃそうだよな、初めて会ったおばさんに、根掘り葉掘り聞かれ、答えなきゃならないと思って来るのだ。

相手の立場に立ってみたら私だってそうだ。怪訝な顔は当たり前である。

いろいろな人がいる。その人の中にはいくつもの宇宙が広がっている。そしてほとんどの方がその宇宙には目を向けず、目の前の世界と対峙(たいじ)している。

カウンセリングではないけれど、キャリアコンサルティングの際に、「あなたの特性はなんですか?」と伺うと、大抵の人は首をひねる。

人に聞いておきながら自分だってそんなことをいきなり聞かれたら面食らってしまう。

「好きなことはなんですか?」「気分の良いときはどんなときですか?」。これなら私も躊躇なく答えられる。

うだうだと名前のつかない時間を浪費すること、飛行機を見て「鉄の塊が空を飛んでるよ」と可能性について考えること、ヨガで体を伸ばし、まるでTVで見るようなスタイルの良いモデルさんのような気分に浸ること、好きな音楽を流し、車の中で熱唱すること。

質問について、クライアントは首をひねりながら自分の宇宙に潜っていく、そして質問に対しての答えを、優秀なスキューバダイバーのように、自分の宇宙から見つけてこようとする。

その表情がとても好きだ。自分を知ることは実は簡単である。言葉ではなくてもよい。心に浮かんだ風景を言葉にして、エピソードまでつけてくださると、クライアントの表情はその人らしさをますます取り戻す。周りの空気が光り出す。

もやもやとしたまま来室される方も多い。どんな人でも光がある。目の前で見ているとその光がとても輝いて見える。

しかし、クライアントは自分では気づかない。その光を信じて一歩踏み出してほしいなと思う。きっとうまくいく、それを阻むのは恐れる心だ。

一度チャレンジしてだめなら、大丈夫になるときを待てばよい。ずっとだめなら、気晴らししながら分水嶺(ぶんすいれい)を待てばよい。

きっと大丈夫、まっすぐ進もう。その光を「自信」というのだ。