「歩こっか」

少し斜め後ろを歩く私は誤魔化すように水を一気に飲んだ。変な音が喉で鳴り、みるみるうちに顔が赤くなっていく私をよそに、祐介は夜風を感じながら歩いている。

「どうして会おうと思ったと?」

ふいに気になっていたことを聞いたのは私から。

「んー、ずっと会ってみたいなって思ってた。だけど俺六つも年上やん? 里奈は未成年だからまずいのかなって」

「犯罪になっちゃうのか」

「会うだけなら犯罪にはならんよ」

「すぐそこに公園あるからあっちで話そう」

春の生暖かい風と街灯の明かりが程よく顔を照らしてくれ、化粧が多少崩れていても気づかれないだろう。何度も横顔を見てはカッコいいなぁと思わず口に出てしまいそうになる。公園に着くと、散ってしまった後の桜の木が綺麗な新緑に変わっていた。その下にある木製のベンチに腰を掛けた。

「会えて良かった、来てくれないかもって少し思ったけん」

「ちょっと緊張したけどね。どう? 顔同じ?」

少し照れくさそうに鼻を擦った。

「実物の方が可愛い」

「祐介も写真なんかより全然イケメンだよ」

「里奈は好きな人おらんと?」

「うーん、祐介は?」

「俺はいる」

「そうなんだ」

お互いに恋愛話はしなかったので、祐介に好きな人がいることを知らなかった。心がちくりと針を刺されたような痛痒いくらいの変な感じがした。

「その子に告白せんと?」

「しようと思ってたんだけど、案外緊張するんだな」