【前回の記事を読む】学校でも家でも布団の中でも携帯を片時も離さず「モバゲー」する私。モバゲー内のサークル活動で頻繁にやり取りする男性ができ…

第二章

金曜日の夜、明日の休みはすることがなく退屈だと漏らす私に「会わないか」との誘いがあった。いつかは言われる覚悟でいたがいきなりの告白に緊張が走り、布団で寝転がっていた体を起こして正座した。

「いいよ」

気づかれないように呼吸を整えてから、少し声に余裕を持たせて答える私に、祐介は嬉しそうな声色を上げた。

「今から行っても良い?」

「明日じゃなく?」

「うん。家の近くに着いたら連絡する」

電話を切って私は急いでリビングへ降りていった。午後十一時半頃、母はまだ起きていた。

「出掛けると?」

慌てて服を着替えて化粧の準備をしている私に、母は少し心配そうな顔を向けていた。

「友達が家の近くまで来るだけやけん。大丈夫」

「暗いから遠くへ行っちゃダメよ。何かあったらすぐ電話しなさい」

最低限の会話しかしていない私でもこんな時くらい心配させないようにしようと、精一杯の安心感を与える返事のつもりでいた。母も止めることはせずに送り出してくれる。

この距離感が丁度良かった。見放されているわけでも、制限されるわけでもない。だから私は悪い道にだけは行かないと、自分ルールを作り忠実に守っている。少しだけ、夜中に家を抜け出すということは除いて。

祐介からの連絡が来たので家を出ると、目の前のコンビニでタバコを吸っている男性がいた。ゆっくり顔を確認しながら近づいていくと目が合った。

「里奈?」

吸っていたタバコを足元に落とし靴底で火を消す。切れ長の目をして鼻が高く、面長の輪郭に風に揺られて顔にかかる長さの茶色い髪。雄介は写真で見るよりイケメンだった。身長は一七五センチ以上あるように見えて、なんだか自分の容姿に気後れして顔を隠したくなった。

俯いた私に「怖い?」と心配そうな声を出す祐介に、力強く頭を横に振ってから「ちょっとお水買ってくる」とコンビニに逃げた。

もっと気軽に会えると思っていたら、思いの外緊張してしまい上手に話せなかった。祐介は私のことをどう思ったのだろうかと不安な気持ちのまま、食品コーナーのミラー部分で化粧が変ではないかと確認する。水を買ってから外に出ると、祐介が優しく微笑んでいた。