「そうですねえ」と応じるだけで微笑みを返した。沙那美は花の様子をいろいろな角度から写真に撮った。
駅での署名も五千名を超えた。
そうなると、この町の人の関心もなかなか開催されない自治会総会に集まりだした。一方、沙那美のことを「菩提樹に取り憑かれた巫女や」など謂われのない風評も流れる。
自治会長もこれ以上の引き延ばしは不利と感じたらしく、ようやく次の日曜日の夜、総会が開かれることになった。
自治会は、会長以外はすべて輪番で役員が選ばれている。沙那美はシンパのボランティア仲間の役員から会長の動向を聞き出していた。
あの菩提樹はお宮のものだったが、今は市に引き継いでいるのだから、市の意向に合せて伐採することに自治会として意見をまとめたいということだった。役員のほとんどが新住民だが、密かに「村会」と称して事あるごとに集まる先住民は、会長派と言えた。
現に今日の会場の、この会館は村が市に合併する前に持っていた六甲山麓の村有林の一部を市へ売って建てたものだ。だから表向きはフリーだが村会メンバーが運営していたから、事実上ここの利用優先権が与えられている。
それに利用料金だが、先住民は無料、新住民からは低料金だが徴収していた。沙那美はこれもおかしいとおもっていた。山森先生の地域では役員はもちろん、主として新住民に運営が任されているという。財産区の運営管理権は現在住んでいる住民すべてにあるのだ。