これで車はでられない。どうしたらいいのか。理由を言わないわ。車からも乗っている人はでてこない。車の姿を見ておかしな暴走族風であることがふたりにはすぐにわかった。ああ、どうしよう。どうすればいいの。
「裕子さん。きっと暴走族よ。どうすればいいのかしら」
「ここに駐車していることがいけないのかしら」
「そんなことじゃないわよ」
青木さんの所在確認どころではなかった。やがて、車の男がでてきた。
「お嬢さんいい車ですね。わたしたちにもその素晴らしい車を貸してくれませんか?」
「なんなら一緒に乗せてくれれば島でも案内しましょうか」
因島を見物に来たわけではない。青木さんに逢うために来ている。わたしたちにかまわないでくださいと言いたいわ。裕子は憤慨していたので語気が荒くなっていた。
「いいえ、けっこうです」
「ほう、なかなか威勢がいいじゃないか」
「いいですから……早く車をどかしてください」「運転席に乗ってみたいなあ。ちょっとだけ座ることはできないのかなあ」
男のひとりが車からおろすように裕子の腕を引いた。
「やめてください」
男は容赦しなかった。無理にドアを開けて引きずりおろされる裕子であった。背が高い裕子はしかたなくおりた。裕子を見てほかの男がため息をついていた。男に無理におろされるときにサングラスが外れた。手に持ちなおす裕子。
「ほおお……いい女やで」
恵利子は助手席でおびえていた。どうしよう。これからどうなるのか。不安でいっぱいだった。
「お嬢さんよ。俺たちにつきあわない。島を案内するぜ。二度と行けないところなんかもご案内しますよ」
男は裕子の腕をつかまえていた。
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