「見た感じ、わたしたちより歳がいっているように思うけど歳はわかっているの?」

「歳はわからないの。いま、歳は関係ないの」

午後もこの道を通り造船所に入るのだろうが午後からは仕事である。どうすればいいか。裕子に尋ねた。

「裕子さん、夕方あの男性が帰るまで因島を見物しない?」

「いいわよ。でもいいところがあるかしら?」

「観光協会でパンフレットをもらってくるわ」

観光パンフレットを手にしたふたりは、ここがいいとかあそこにしようとか話し合った。やがて因島の村上水軍城や白滝山に登りご機嫌だった。

午後四時になっていた。昼間と同じ場所に車を駐車させて待っていた。ときどき外にでて待ち構えるタイミングを計っていた。

そのころ、ふたりは気にしていなかったが、数回裕子の車のそばを通る三台の地元の車があった。暴走族風の車である。恵利子たちのうしろ百メートルほどで、その車の男たちが話していた。当然ふたりのファッションを見ている。

「あの車と乗っている女は超一流。どこの女だろうなあ」

「ああ、服を見ればわかる。すげえ女やで。外にでたときに見たけど背も高いし、俺たちには縁のない女じゃ。どこの女だろうか」

「すこしからかうか。あわよくばどこかに誘いこむか」

「そうでもしないと身体が持たないで。あの車を前後で挟むか」

三台の車は発進しSUVの前に一台、うしろに二台。裕子の車を挟むように前後に停止した。間隔の距離がつまっているので裕子の車はでることができない。

「前に車が止まったわよ。うしろにも止まっているわ」

「どうしたのかしらね」