【前回の記事を読む】みんなはいともたやすく、スイスイとできた鉄棒。私一人だけできなくて、来る日も来る日も一人で練習を続けた。ある日の夕方…
3. 「わたし」の成り立ち
3-2:コケコッコー!
どうやら班を三つにわけて飼育当番をするらしかった。一つめがうさぎ、二つめは鯉、インコ、そして三つめは、鶏だった。
ただでさえ動物があまり得意ではないわたしは、できるだけ動物に触れなくていいと思い、鯉、インコを一目散に希望したが、じゃんけんであっさりと負けてしまった。
となると、う、うさぎかなぁ? 鶏は明らかに怖かった。なんとかうさぎで留まるだろうと信じて再度じゃんけん。これがまたあっさりと負けてしまう。瞬く間にわたしはその日から鶏当番になってしまった。
この鶏は、学校の中庭と言われる場所で飼われていた。動物があまり好きではないわたしは自ら近づくこともなかったので、学校に何年も通っていて初めてその場所に行ったと思う。この鶏のお世話と言うものほど苦痛なものと言ったらなかった。
まず鶏を鶏小屋から外に出す。どの鶏も大きくて力が強いのでこれにまずは時間がかかる。ようやくすべて外に出したら、小屋の中の掃除。水やえさを交換すると、さぁ、また鶏を小屋の中に戻す作業。これがとてつもなくしんどかった。毎回何時間もかけてやっていた気がする。
ある日、当番が土曜日に回ってきた時があった。土曜日は給食もないので、下校時刻は十一時半頃。
そのまま、掃除に取りかかりどれほど時間が流れたのかわからなかったが、ようやく全部の鶏を小屋に戻して、さて、ようやく家に帰れると思った瞬間、珍しく父親がそこに立っていた。
え? なんでだろう!?と思ったら、待てど暮らせど帰ってこないわたしが心配になったらしく、見に来たそうだ。時計を見て納得。なんと午後四時を回っていたのだ。昼食を忘れ、時を忘れてよくもそんなに一生懸命頑張れたものだ。
少し経ったある日、そこにいた鶏たちは保健所に預けられることになったと聞かされた。理由は、学校の先生たちですら抱けないほど大きくて凶暴で、手がつけられないからもう学校で今後継続して飼っていくのは難しいと判断されたそうだ。