そのひとたちは青(あお)い帽子(ぼうし)と赤(あか)い帽子(ぼうし)をかぶっていた。
そのひとたちは名前(なまえ)をもたなかった。
「なぜ、あなたたちには名前(なまえ)がないの?」
わたしがたずねると、そのひとたちは不思議(ふしぎ)そうに言(い)った。
「あなたには名前(なまえ)があるの?」
「名前(なまえ)は……」
そうきかれたとたんに、
なぜかわたしは自分(じぶん)の名前(なまえ)を忘(わす)れてしまった。
そのひとたちはうれしそうに笑(わら)って言(い)った。
「それでは、あなたをなんと呼(よ)んでもいいんだね」
自分(じぶん)に名前(なまえ)がないことが、わたしはとても気(き)に入(い)った。
だって、わたしはなにものでもなく、
なにものにでもなれるのだから。