自分に名前がないことが、わたしはとても気に入った。だって、わたしはなにものでもなく、なにものにでもなれるのだから。
大きくなってゆくひとと小さくなってゆくひとのおはなし
【第1回】
ほしらん
いつもすぐそばにいて、ずっととおくで生きている。
心にそっと寄り添う、夢幻的な世界を描く絵本。
まいねん、すこしずつ大きくなるひとと、小さくなるひとのいる“その場所”に迷い込んだ私は、ある「おくりもの」をもらう。その日、私は“その場所”に迷い込んだ。ただ一本のまるい木のほかに、なにもない場所だった。「きっとわたしたちはあなたにおくりものをあげるよ」青い帽子と赤い帽子をかぶった“そのひとたち”は私に言った。それから、まいねんの同じ日に、私は“その場所”に訪れるようになる……。※本記事は、ほしらん氏の書籍『大きくなってゆくひとと小さくなってゆくひとのおはなし』(幻冬舎ルネッサンス)より、一部抜粋・編集したものです。
大きくなってゆくひとと小さくなってゆくひとのおはなし
それは、とおい、とおい昔(むかし)のこと。
ある日(ひ)、ある場所(ばしょ)で、わたしはそのひとたちに出会(であ)った。
そこはなにもない場所(ばしょ)で、ただ一本(いっぽん)のまるい木(き)が立(た)っていた。