1.Lloyds Bank 劣後債案件
80年代も後半に差し掛かっていた当時、英国は金融危機の只中(ただなか)にあった。多くの英国の銀行は損(いた)んだB/S(バランスシート)を補強するために、資本増強の必要に迫られていた。資金調達先として期待が向けられたのが、バブルの登坂(のぼりざか)にあって経済絶好調の日本の市場であった。
法に触れなければ何をしても良いと新設された新規業務開発グループに配属されて、そうは言われても何をして良いか分からずに、闇雲に在京の外銀を訪問しては世界の活動情報を得るべく何かヒントになるものは無いかと聴取していたところに、英銀(えいぎん)の増資引受の打診があったのは自然の成り行きだったのかもしれない。
外国債券の国内販売に力を入れていた UBS(ユニオン・バンク・オブ・スヴィッツランド)からの持ちかけで、発行体の信用に傷付くので、NDA(秘密保持契約)を結ばされてからの話となった。UBS とは、当時邦銀も始めようとしていた金利の高い Buy out ローンや劣後債の引受の件で、幾つか協働した経緯があった。KKR 等のプレーヤーが出現し始めていた頃である。
NDA 締結後、対象銀行の名が明かされ、Lloyds(ロイズ) Bank のレーティングの資料が、どっさりと手渡された。メール等無かった時代である。未だ対外上はMoody’sとS & PによりBBB+(トリプル B プラス)(信用力が高いが低下するリスクあり)の格付けが与えられ、投資適格との説明が長々と記述されている。
持って帰って、部長席の隣の円卓で先ず部内打合せ。銘柄は良いので更に背景や可能性を探ってみようとのことで、同じフロアの国際審査部へ場を移し、概要を説明の上協議をすることになった。そこでは、“リスクは取れるかもしれないが、そもそも同業である銀行の株を持ったら同額自分の銀行の資本金額を減らす事になるから、幾ら好調の我行でも難しい”とのことが判明した。
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