ご覧のとおり、適応疾患やその疾患の状態など非常に複雑で、その上に更なる新薬開発、適応疾患の拡大も年々進んでいます。免疫チェックポイント阻害剤の治療があなたの病気に適応になるか否かは主治医に聞いてみるのが一番です。
ここで大切なことは、免疫チェックポイント阻害剤で治療すればがんが治癒するという訳ではないことです。この薬剤はTリンパ球を活性化するために、がん細胞のみでなく正常組織も攻撃する可能性があり、今までの抗がん剤では認められないような副作用が生じることがあります。
例えば、大腸、肺、脳など体のあらゆるところに炎症の起こる可能性があり、これらの副作用は時には命にかかわります。
40歳台の若い大腸がん患者さんのお話です。術後の肺・リンパ節転移で抗がん剤治療を受けていた方でした。ある時、体のだるさのため救急車で搬送されてきました。強い倦怠感の原因が思い当たりません。大腸がんの保険適用ではない免疫チェックポイント阻害剤治療(ニボルマブとイピリムマブ)を東京の某美容整形クリニックで受けていたと、その時初めて知りました。
倦怠感の原因はその治療の副作用である副腎機能不全でした。
患者さん曰く、外国からの患者さんも多く安全な治療だと思った、強い倦怠感が出てきたので某クリニックに問い合わせたところ「通常の1/20の投与量だから副作用が出るはずはない」と説明されたとのこと。ちなみに支払ったのは200万円でした。
美容整形クリニックで抗がん剤治療を受けることに不安はなかったのでしょうか。美容外科医はがん治療の経験はほとんどないと思います。私には、まるで果物屋で魚を三枚におろしてもらうほど場違いなことに思えます。