「ちゃんと食べて、早く病気を治そうね」
なっちゃんが、ベッドの上にトレーをのせる。お椀を片手に持ち、一口ずつゆっくりとおかゆを僕の口に運んだ。
食べている間も僕がチラチラと天井を見るので、「光くんどうしたの?」となっちゃんも上に視線を向ける。
「ううん、なんでもない」
母の魂が見えることは、誰にも言ってはいけない。父との約束もあったが、もし言ってしまったら、母の魂が消えてしまいそうで怖かった。
おかゆを完食して薬を飲むと、ほどなくして睡魔が襲ってきた。僕は横になり母の魂に見守られながら眠りについた。
目が覚めると、母の兄である伯父もアメリカからやってきていた。アメリカで働いている伯父は、父から事件の翌日に知らせを受けたが、母の臨終には間に合わなかった。
伯父は、「光、大きくなったなあ」と潤んだ目で僕を見つめた。
「おじさん、僕を見たことあるの?」
「光が産まれてすぐに抱っこしたぞ。その時は、こんなに小さかったんだ」
両手で赤ちゃんを抱くしぐさをして見せる。
「お義兄さん、こちらでお茶でもどうぞ」
ふくちゃんに呼ばれた伯父は、僕の手を取り父の前に腰を下ろすと僕を膝の上に乗せた。
「本当に大きくなったな。あれからもう五年か。早いな」
伯父がしみじみと呟く。
「義兄さん、よかったら、うちに泊まってください」
重くなった空気をかき消すように、父が言った。