はじめに

風楽(ふら)という名前で起業して23年になります。私自身のエネルギーが風なので、「いつも楽しい風が吹いているお店」でありたいという思いで名前をつけました。

何人かの友達からは「いつもフラフラしているあなたにぴったりの名前だね」と言われたこともあります。その通り、私は気まぐれで、飽きっぽいくせに何でもやりたがり、熱しやすくて冷めやすいタイプ。そして何より風のように自由でいたい人。

経営者としての資質ゼロ。さらに資本も後ろ盾も経験もないシングルマザー。ただ成り行きと勢いだけで起業してしまった店なのに、こんなに長く続けられるなんて、全く予測していませんでした。

ここまで続いたら、もはや風楽と共に生きることは私の体の一部。むしろ私の人生の必須条件かも。今更パートに行ったり、別の会社に入って、指示通りに動く働き方はできそうにありません。

私は「仕事」をあえて「志事(しごと)」と書くようにしています。私にとって志事とは仕えることではなく志すことだからです。

いつのまにか志事と私生活の区別がなくなってしまい、どこまでが志事なのかわからない。志事=私自身=私の人生という感じなのです。この23年間に移転が3回。4ヶ所めでようやく終の棲家となる古民家に出会うことができました。

ちょうど還暦のタイミングで、ここから第二第三の人生、いよいよ締めくくりの時が始まったのだと思っています。

人生にはいくつかの舞台(ステージ)が用意されていて、何かのきっかけでそれが大きく変わる時期がやってきます。

私の場合、お芝居の床がぐるりと回って舞台装置が変わるように、次のステージへと変化する瞬間が、この23年間で何度かありました。最後の移転の時は、音をたてて、ぐるりと動いていくのがわかるほど、大きな変化でした。まさに大道具から小道具まで、かなりの勢いで一気に動きました。

それを一緒に動かし支えてくれたのはたくさんの友達やお客様、そしてお世話になった方たちです。私は今、この原稿を舞台装置が大きく動いた後の静かな古民家で書いています。 

古民家で迎える数少ないお休みの朝。野鳥の声でゆっくり目覚め、ベットの中でみーしゅけと草(そう)ちゃん(風楽の看板娘の猫たち)を撫でながらゴロゴロ。ようやく起きて2人にご飯をあげたら、お湯を沸かしてコーヒーを入れ、朝陽が燦々と差し込む縁側で、しばらくボーッとしています。