帰りに上杉君が話しかけてきた。

「正良君ってさ、死にたいって思ったことある?」

別に深い意味はないと思った。普段から上杉君はこの手の話ばかりするのだ。

「僕はね、生きてても、つまらないと思うんだ。だから大学を卒業したくらいに自殺したいんだよね」
「僕は生きてて楽しいと思うけどね」
すると上杉君は
「わかってないなあ」
と軽蔑したような目で見てきた。
「暗い話はやめようよ」
これはいつもの流れであった。

それから三か月後、両親が別居することになった。僕は当然父と一緒に住んだ。兄は母の方へ行った。それからというもの、僕は楽しいという感情が消えてしまった。何もかもがつまらない。別居してせいせいしたと思っていたが、内心傷ついていたのかもしれない。そしてついに引きこもりになってしまい不登校の高校生になってしまった。毎日自室にこもっているのは退屈でつらい。 かといって、学校に行くのも嫌だ。父は豹変してしまった僕のことをたいへん心配した。

それからさらに三か月が過ぎた頃、僕は思い切って学校に行ってみることにした。久しぶりの学校はとてもつらかったが、何とか頑張って一日を過ごせた。父や担任の先生には随分心配をかけた。これからも、学校に通い続けようと思った。そして強く、前向きに生きていきたい。