2023年シーズンも前年に引き続き12勝を挙げ、リーグ4位となる2・38という防御率を残しました。入団1年目から素晴らしい力量を見せつけていますが、2023年には侍ジャパンに選出され、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場を果たすなど、順調にそのキャリアを駆け上っています。

「ピッチングフォーム」の構築において戸郷投手は凄い技を連発して天才的です。「ピッチングフォーム」はシンプルに見えますが、そこに隠された意図は画期的です。これから、その点を中心に説明していきます。

戸郷投手はバッターが「スイング」しようとしたときには、「ボールが想定以上に手元に近づいていて、『スイング』してもボールを捉えるにはもう追い付かない」という状況を作り出すことができています。このような状況に陥るとバッターは、球種の判別も困難になります。

なぜそのような状況を生み出せるのかと言うと、バッターが考えている以上に早く、戸郷投手がボールを「リリース」しているからです。バッターはピッチャーをよく見てバッターボックスに立っていますが、それでも立ち遅れてしまうのです。そのようなピッチャー有利の状況に持っていけるのも、戸郷投手の「ピッチングフォーム」と投げ方によるところが大きいと言えます。

 

バッターにとって、ピッチャーがボールを「リリース」したという情報は重要です。その情報をもとにスイングを行いますが、その「リリース」情報を正確に入手できていないとバッターは苦境に陥ります。「リリース」情報をバッターに、正確に与えないだけでなく、バッター泣かせの複合技を駆使する戸郷投手の「ピッチングフォーム」の構築を見ていきます。

「リリース」につながる情報の秘匿

ピッチャーがボールを「リリース」するということは、一つのイベントで大きな変化点ですので、そこに何かしらの特徴が生まれるのですが、その痕跡をひたすら消す作業を戸郷投手は行っていると言えます。戸郷投手は「リリース」することに関して、変化点が出ないように発想の逆転を含めて工夫を凝らしています。  


※ボールに伸びがあり、ボールの初速と終速の差が少ない

 

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