「お前、石破一夏だろ」
「だから何よ」
「大聖の部屋から信永が出てくるのを見たって本当か?」
嵐士は急に真剣な表情になって問い質した。
「ええ、見たわ」
もうこいつの耳に届くまで噂になっているのかと戸惑いながら一夏は答えた。
「じゃあ、大聖はあいつに殺されたって言うのか。おい、お前、何とかしろよ」
「何とかしろって何を?」
焦る嵐士を見て一夏はだんだん愉快な気持ちになってきた。
「このままだと俺も殺されるだろうが。お前があいつを何とかしろよ。それともお前も共犯か?」
「そんなわけないでしょ。あんた達が梨杏をあんな体にしたのよ。あの子はもう私の声を聴くこともできない。私が見たのはきっとあの子の生霊よ。大聖はその生霊に呪い殺されたんだわ。そんなに疑うのなら警察に相談すればいいじゃない。ついでにあんた達が犯した罪も洗いざらい白状してね」
「おい!」
嵐士が呼び止めるのを無視して一夏は部屋を出た。
「その時のあいつの顔ったらなかったわよ」
久しぶりの笑顔を見せながら一夏が言った。仕事を終えると彼女はすぐに海智の病室にやってきた。
「確かにそれはいい気味だな」
そう答えたが、海智は複雑な心境だった。まだ彼女が犯人ではないかという疑念は拭い切れていない。彼は彼女にこの事件の解決のために金清に協力を依頼したことを説明した。