九歳の時、母親も病気で亡くなってしまう。収入が無いため、借家も追い出され、住むところが無くなった段蔵は、途方に暮れていた。その時に段蔵は、四代目風魔次郎太郎に拾われたのである。
小田原から北国船に乗り、秋田に着いた加藤と杏は、そこで船を乗り換え、秋田の南側にある酒田を経由して、新潟の港で降りた。
「ここで俺は、仕官先を見つける。越後の上杉謙信様は、これから一番伸びる大名だ。そこで軍功を上げ、武将になる。それから、独立して東日本の港を全て支配する大名になるのだ。ワハハハ」
新潟の港に降りながら、加藤は杏に大言壮語を吐いた。その後、加藤は新発田という武将への仕官が決まった。
加藤の主(あるじ)は、新発田家当主の次男、新発田重家である。重家は、小田原城攻めや川中島の戦いで、華々しく活躍し、その名を轟かせていた。
重家の父親は、第四回川中島の戦いの頃に亡くなる。新発田家は、重家の兄が跡を継いだ。兄が家督を継いだ時、重家は十五歳という若さだった。加藤は、重家と年が近く六つ上の二十一歳である。
重家にとって、加藤は、もう一人の兄のような存在だったのだろう。加藤は、重家に気に入られ、いつも側にいた。