小さな旅―② チャレンジ道路
龍神から十津川に至るルートには425号線と県道735号線の二つのルートがあります。
今回のルートは735号線。なぜそのルートが「チャレンジ道路」ということなのか。もちろんこのネーミングは私の独善です。
1 過疎へのチャレンジ
この道路は龍神温泉から丹生川沿いにヤマセミ温泉に至ります。さらにそれから和歌山県側から奈良県側の十津川に入る道です。
ヤキセミ温泉施設には「丹生ヤマセミの郷キャンプ場」という川岸沿いのキャンプ場も併設されています。昔の小学校の跡地は集会施設に変身。多分シーズン中少しは賑わいをみせるかもしれませんが、何せ遠隔地です。
龍神の温泉からも狭い道路を1時間近く走らねばならない不便な地。なかなか車時代でもここまで辿り着くには都会人は勇気がいるのです。
ここから十津川までの間には数戸の家、集落と思しき地区はあります。しかしそのほとんどが廃屋と化しているのです。かつて人が住んでいたと思うと侘しさがこみ上げてきます。すでに「過疎や限界集落」をとっくに超しています。
それでも1戸、1戸が谷にへばり付くように生活の様子を留めてはいます。まさに人杣(そまびと)。ブータンやヒマラヤの奥地住民にも劣らない風情です。
「過疎」とはかように凄まじい。その意味でこの道を走ることは過疎の行き着く先の姿を如実に物語っています。こんなところに住み着いている人たちに畏敬の念すら湧き上がってくる思いです。
2 自然へのチャレンジ
TV番組の「世界の村で発見! こんなところに日本人」では、日本から遠く離れた異郷のへき地などに住む人を尋ねています。
遠い外国に行かなくても、狭い日本の国土の中でも、こんなにも人里離れたへき地に住む人がいるのです(そういえば「なぜそこ?」という番組もありましたね。大阪側葛城山麓の我が家にも有名な元プロボクサーさんを伴い突撃訪問されびっくりしたことがありました。
それほど自宅は山奥、大阪でも標高400mに位置し、青少年の自然道場として使用していました)。
狭い日本とはいいながらも無果(はてなし)山脈の北側の広い紀伊山地周辺、紀伊半島のど真ん中にあたり、まさに果てしない山並みを縫うように峠を越えてこの道は走っています。それはアドベンチャーワールドの世界。野生動物の天国か。道端に車に轢かれたテンか狸かを何匹も見かけました。
恐らく猪はじめキツネや鹿、クマも生息しているのでしょう。
今まで各地を走りましたが、こんな道は日本の道路の中でも数少ない、深山幽谷。
これはまさに自然探検ルートであり、自然へのチャレンジ道路なのです。
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