一、壁

医療

病気を持っている方、患者への治療などにも関係する内容で見られる壁についての考察である。患者と医師の双方から考察せねばならない。

まず患者としてみれば、初期の違和感、進んで発熱、その他、病気によって様々な症状により、自分が何か病気のようだと感じる、または、はっきりと病気を認識する。転倒、骨折などはすぐ診断できる。

症状は疾患によって違うし、進行前の違和感からはっきりと自己診断できる場合や、医師の検査によって病気を指摘される。その原因とか診断などはとりあえず、今は考察の対象から除外して、患者の立場での壁を考えてみる。

初期には、病気の壁がどこにあるのか、どの程度のものかなどは分からないので、困惑する。正確な診断のため、医師の診察を受ける。これも多くの方にとっては、嫌な壁である。様々な診断機器で担当者の言われるがままにしなければならない。

多くの患者にはこれが、動かせない壁と認識されている。この壁の無い人は、もう人生を諦めた人かもしれない。もっともそのような方は病院には行かないと思うけれど。

その後の治療も同様に、多くの壁に囲まれている。病院全体が、受付から会計に至るまで、診察、検査、治療を行う場であり、これはすべて壁で囲まれている。最近の病院では患者様と敬称で呼ばれることが多くなった。患者を大切に思うのは、非日常の場で戸惑っている多くの壁を抱えた患者の気持ちを大切にしている表れである。

一方で医師、看護師、その他の医療関係者の立場で考えてみると、多くの人は、自分の仕事は患者を治し、楽にし、正常生活に戻すためのもの、患者の要望に応えて、状況を良くするという以外の何ものでもない。

自分の利害が優先されることはない。従って、この仕事は天職と言われる。患者へは、何らの壁はない。このことに気づいていただければ、患者の中にある壁はすべてなくなるのではなかろうか。

しかし医師も人間である。患者に接していない時間に趣味を楽しむ方も多い。しかし、この間でも担当患者のことを忘れることはない。また、緊急時には、どこにいても戻って対応する心の用意がある。

この医師の24時間体制に対して、最近は「働き方改革」で、「医師の時間外労働規制について」を厚生労働省が発表した。

それでもまだ、病院に行くのは絶対いやだ、と言う人も多い。そのような人にとっては、病院への壁が頑として立ちはだかっているのだろう。