仕事が好きなのか、何にでも真剣勝負で取り組まないと気が済まない性格のせいかわからないが、仕事が始まると夢中で一日が過ぎてしまう。

しかし振り返ってみると、昔はいつも体が怠く、体を引きずるようにして仕事をしていた記憶があるが、最近、一日働いても疲れるということがない。

しかも三百六十五日、朝から晩までノンストップで何らかの仕事が続く。休日も研究のまとめや論文の執筆、小説や健康関係の本の執筆など、仕事が途切れることがない。読書の時間が取れないのが悩みになっているくらいだ。しかしこの忙しさが重荷だと思うこともない。

疲れを知らない体になったのには理由がある。昔は体が弱く、常に気分も体も重く、病気がちだったのだが、その苦しみを何とかできないものかと考えるようになった。

片っぱしから健康や医学の本を読み漁り、これは良いかもと思ったものは試してみた。もちろん、合理性のある健康法だと考えられるものの中から、特に良さそうだと感じられるものを試してみたのだ。

明らかに効果が見られたものは二つあった。食事の摂り方と歪んだ姿勢を正す方法である。

まず第一に食事法だが、これこそ正しいと主張する食事法は数多くある。その中から合理的なものを選択し、まず自分で実践して試し、その結果の体の状態の変化を観察する。

毎日診ている患者も健康状態、顔や爪の色艶などと食生活を問診し、その関係を比較検討する。それらを常に総合的に検討しながら、草介は現在の食生活に辿り着いた。要点をまとめると次のようになる。

・主食は未精白

・肉は控え目で、特に牛肉、乳製品は摂らない

・野菜は一日七百グラムを目標に摂り、半分はスープか具沢山みそ汁とする。この目的は汁の中に出る抗酸化物質を摂ることにある。あと半分は生食し、この目的は多種類の酵素を摂ることにある

・蛋白質は主に大豆と魚から摂る

・海草、小魚、種実類は毎日欠かさない

・食品に添加されている化学物質はできるだけ避ける

この効果は大きく、自分や家族、指導した患者などで確認できた。もう一つ、並んで効果が大きかったのは、姿勢の歪みを正すことであった。ここで歯科の力がこれほど大きく発揮されるとは思ってもいなかった。

上下の歯の咬み合わせは精密設計された機械のように、ミクロン単位で正しい位置で咬むようにできているのだが、この咬み合わせにズレが生じると下顎の位置がずれ、五キログラム以上もある頭部の重心がずれる。