「分かりました」

と言ってボーイへカードキーを渡し、

「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎください!」

と言ってにっこり微笑んだ。

浩は、ボーイの後に付いてエレベーターに乗った。

ボーイが階数表示ボタンの所へカードキーを翳して四十三階を押し、四十三階の4311号室へ着くと、カードキーで部屋を開けて浩を通し、リュックを傍の荷物置きに置いた。

直ぐ手短に部屋の各スイッチ類を示し説明した後、挨拶をして出ようとする時に、

「ご存じとは思いますが、リュック正面の物入れに小さい穴が空いています。細かい荷物が落ちないように、十分お気を付けになられた方が良いと思います!」

と言って、

「お休みなさい」と出て行った。

浩は、直ぐリュックを見た。

確かに表側のやや大きい上袋の下部に小さい穴が空いていた。

一体何の穴だろう?と思って穴を触ると深い穴に指がスッポリ入ってしまった。

吃驚してリュックを荷物置きから下ろし、ランドリー袋を被せたアタッシュケースを取り出すとそこにも穴が空いていて反対側の面には小さなコブの膨らみが有った。

直ぐガムテープとアルミテープを剥がし、アタッシュケースを開けたらコブの様な膨らみの所から金属の塊が転がり落ちた。

浩が手に取ると直ぐピストルの弾だと気付き、吃驚してそばの椅子にへたり込んだ。

ピストルの弾! まさかピストルで撃たれていたなんて! あのホテル新橋東京を出て地下通路を歩いている時だ! 

何かにけつまずいたか? 押された!と思って振り返った、あの時だ、間違いない! 

あれはけつまずいたんじゃなくて、ピストルで撃たれリュックに当たって、後ろから押されたように倒れこみ膝を打ったんだ! 

アタッシュケースが盾になってピストルの弾を防いだんだ……。

此れが無ければ今頃死んでた!と思うと恐怖で身体がガタガタ震え、膝を抱えて何も考えられなかった。涙がポロポロと頬を流れ、震える膝の上に落ちた。