第5章 建物の老朽化が止まらない
積立金が高いマンションは資産価値が低い?
夫婦はマンションを売却しようと思って不動産会社に査定を依頼した。南向きで日当たりもいい、きれいに使っているつもりだし、自分でも雑誌に出てくるような部屋だと思っている。
しかし、不動産会社からの提示額は不本意なものだった。「このマンションは周辺のマンションと比較して積立金の金額が高いですね。これでは、購入しようとする人が引いてしまいます。なんとかなりませんか」
そう言われたところで、積立金の金額は自分では決められない。「いや、待てよ。積立金が高くて売れないのだとしたら、ウチだけの問題じゃないはずだ。これはマンション全体の資産価値に関わる重大な問題だ」
早速、夫婦は理事会に値下げを提案する。理事会でもマンションが売れにくいのは重大な問題と考えたようで、総会を開催して、積立金の値下げを審議することになった。
「マンションの資産価値向上のために、積立金の値下げをしたいと思います。来月から平均1万円値下げします。賛成の人は挙手してください」
一斉に手が上がる。誰も反対する者はなく、積立金は値下げされた。誰ひとり、修繕ができなくなることを不安視する人はいなかった。そして、言い出しっぺの夫婦は無事にマンションを売却し、意気揚々とマンションを出ていった。