「それにね、鶏肉でも名古屋コーチンといって、名古屋独特の美味しい鶏肉なのよ。早く食べてみて。すごく噛み応えがあるの」

早速食べてみると、歯応えがすごいし、鶏皮の部分は少し黄色くて食感はコリコリしている。溶き卵につけて食べるととても美味しかった。秋田の家でも鶏を飼っていたけれど、全然違う。お腹も空いていたから何度もご飯をおかわりして、奥さんにクスッと笑われてしまった。でも美味しいご飯を食べると元気になるし幸せな気持ちになる。明日からお仕事がんばります。

夕食後、田辺家の二階へ。一番奥にある四畳半が私の部屋だった。ふわふわの布団を敷いたら、やっぱり疲れていたのか、すぐに眠ってしまった。

次の日は朝六時からでいいからと言われたけれど、五時には目が覚めていた。もうお店では仕事をしている音がする。お豆腐屋さんの朝は早い。私は急いで着替えて一階に降りていくと、旦那さんと奥さんがもう仕事場にいた。奥さんと離れたところで旦那さんは黙って一人静かに仕事をしていた。

「おはようございます」

と言いながら、六時少し前にお店へ顔を出した。本当はちょっぴり眠かったけれど。

「あら、白石さん。もっとゆっくりでよかったのよ」奥さんが笑いながら言ってくれる。

「でも、お仕事を教えてもらうので」「疲れただろうから、まだ寝ててもよかったのに」

  

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