第2章 マンション3大トラブル 漏水、騒音、ペット
30年生きている犬 101号室 vs 501号室
501号室
夫はアレルギー体質である。ハウスダストの他、獣の毛など、あらゆるアレルゲンに反応してしまう。都心部は空気が悪く、ほこりも多い。そのため、都心まで約2時間という通勤にギリギリの範囲であるこのマンションの最上階を選択した。
購入前に不動産会社を通じてマンションのルールはしっかり確認している。このマンションは20年くらい前に、ペットの飼育が禁止であるにもかかわらず、飼ってしまった人がいて、居住者同士が対立した。その後、マンションのルールが一部改正されて決着している。
その当時の解決策は、次のようなものである。
「禁止であるにもかかわらず、飼ってしまっていた場合は、そのペットが死ぬまでの間に限り飼育を許可する。それ以外は一切禁止とする」
犬の年齢は人間の6倍のスピードであるという。20年前だから当時、子犬だったとしても120歳。もう生きている犬はいないだろう。つまり、このマンションにペットを飼育している人はもういない。夫婦はそう思った。
駅までは遠いため、夫は早朝に車で妻に送ってもらう。そんなある日、駐車場で車を出そうとしていたときに、大きな特徴的な籠を持つ夫婦を見かけた。
あれは犬を入れるケージではないか? だとしたら大問題だ。120歳の犬がいるわけがない。ルール違反だ、すぐにやめさせなければ。夫の健康をどうしてくれる!
ペット問題は新しい局面を迎えている。2003年以前は、ペットを飼うことを禁止しているマンションがほとんどであった。禁止されているにもかかわらず、ペットを飼ってしまう人がいることが問題視され、全国各地で訴訟となるケースも続出していた。
多くの判例では、ペットの飼育を禁止しているルールが存在すれば、ペットの飼育を禁止する側が勝訴している。
その当時、「裁判まではしなくても、何か円満に解決する方法はないか」というマンションの多くで採用されてきたのが、「一代限り飼育可」という方法である。