一代限り飼育可というのは、決してペット飼育可のマンションに変更するわけではない。ペットの飼育は不可というルールのまま、そのときに飼育されていたペット一代に限り、届出をすることによって飼育を認めるものである。

そのペットが亡くなれば、次のペットを飼うことはできない。もちろん、そのときにペットを飼育していない居住者も新たにペットを飼うことはできない。

時間が経てばペットを飼育する住戸はなくなるという解決方法である。飼育不可というルールの原則を変更していないし、飼育してしまった人にとっては、可愛いペットを殺処分したり、手放したりしなくていい。

この「両者の意見の間を取って解決する方法」は、なんでも間を取ることの好きな日本人に適した解決方法であった。

その後、2003年を境に、マンションにおけるペットの状況が大きく変わる。マンションの分譲会社が、マンションを販売するときに決める管理規約をペット不可から可に変更したのだ。

なぜ2003年なのか。これには、バブルの終焉が大きく影響していると言われている。2002年に株価はバブル後最安値の9000円を付け、景気が後退した世の中でペットに救いを求める人が増えた。事実、ペット販売は2000年を境に急増している。

日本国民がこぞってペットに心の癒しを求めたのだ。ペット問題は日本の経済を映している鏡であるともいえる。

あの当時、ペット不可の管理規約であったマンションで飼育されてしまったペットは、「一代限り飼育可」として飼い主のもとを離れることなく飼育され続けていた。あれから時間が経過し、その当時に飼育が許されたペットたちはどうなっているのか。

マンションみらい価値研究所が実施した調査の結果、驚くべきことに、いくつかのマンションにおいて、当時から飼育されたままであるペットが存在していることが分かった。犬の寿命は20年程度である。猫はもっと短い。

届出がされたときに成犬だった犬の年齢を考えると30年以上生きている犬や猫がいることになる。飼い主でもなければ、同種の犬の個体を見分けることは難しい。入れ替わっていても分からない。一代限りのはずが、2代目、3代目になっているのだと思われる。

 

 

【前回記事を読む】「マンションのルールでは禁止ですが、内緒で飼っている人はたくさんいます。」不動産会社の言葉を信じ、犬を家族として迎え入れた夫婦は...

次回更新は1月23日(木)、8時の予定です。

 

【イチオシ記事】「歩けるようになるのは難しいでしょうねえ」信号無視で病院に運ばれてきた馬鹿共は、地元の底辺高校時代の同級生だった。 

【注目記事】想い人との結婚は出来ぬと諦めた。しかし婚姻の場に現れた綿帽子で顔を隠したその女性の正体は...!!