長年臨床講義を担当してきた、私の経験を紹介しましょう。

現在は3年生と4年生の講義を担当しています。3年生の講義では、学生と直接会って会話するのが、たいていの場合初めてとなります。まずは自己紹介をした後、これは試験にでない、と断ってから、まず自分の関係の深い研究の一旦を紹介します。

最近なら私の専門であるポジトロン断層撮影法(PET)を使って、神経内科と共同研究をしている、アミロイドβという異常タンパク質の脳内の沈着を映像化できることを、最初の5分ほど紹介します。最近話題となっている認知症のひとつ、アルツハイマー病の早期診断法として注目されています。特に症状が出てくる前から、その後の認知症の進行を予測することができる、すばらしい手法だからです。

ただ現在、良い治療法がないのが残念です。近い将来アルツハイマー病を早期に診断して、進行を抑える治療法が登場すれば、この画像診断法の役割が、ぐっと増します。さらにはこの課題は、次世代の医療を担う皆さんの大きなテーマである、とも伝えます。聴いている学生は、試験には出ないと聞いているので、リラックスして興味深そうに聴いてくれます。その後に基本的な事柄の説明に入るようにしています。

講義では、大切と思われる内容をレジメにして当日(あるいは前もって)配布します。これがこの講義で話す、重要な事項であることを明示します。あとはパワーポイントを使って、症例を提示しつつ、解説を進めて行きます。途中でいくつかの休憩タイムを作るようにします。私は休憩時間を設ける代わりに、風景を入れたり、ジョークを交えたりしています。逆に大切な事柄については、繰り返し強調しておきます。

また後半の臨床では、患者さんの症例提示と画像も加えています。その読影とその利用法について、学生にあてて読んでもらうようにしています。多くの場合は、前の方で熱心にメモ書きしている学生を指名することになるでしょう。

でも私はあえて教室をぐるぐる回り、ランダムに学生を指名するようにしています。しっかり答えてくれた学生には、その場で大いに褒めることも忘れないようにします。逆に答えられなくても、その努力だけは褒めて、決して批判をしないように配慮します。

たいていは講義の途中に、これからだれ読んでもらおうかな、などと言いながら、教室内をぐるぐる回ります。熱心に聴収している学生だけではなく、多少退屈にしていそうな学生にも指名します。学生の方は、自分が指名されるかもしれないと、少しは緊張してくれるようです。これは眠気をさます絶大な効果があります。

  

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