波
「バーナードだ」ルイスは言った「落ち着いているな、くつろいでいる。歩きながらかばんを振っているぞ。バーナードについて行こう、彼はびくびくしていないからな。僕たちは改札所を通ってプラットフォームへと吸い込まれていく、川の流れが小枝や麦わらを橋脚のまわりに引き寄せるように。
とても馬力のある深緑色の機関車が止まっている、首がなくて背中と太ももだけのような車体で、蒸気を吐いているぞ。車掌が笛を吹き、信号旗が少し下ろされる。何の苦労もなく、自ら弾みをつけて、そっと押しただけで起きた雪なだれ崩のように、僕たちの列車が滑り出す。
バーナードは膝掛けを広げ、ナックルボーンズで遊び始めた。ネヴィルは読書。
ロンドンが粉々に砕ける。ロンドンがうねり、大波を立てる。どこも煙突や塔だらけだ。白い教会が見える、あそこには尖塔のあいだにマストが一本。そして運河。あそこの広場にはアスファルトの小道が見えるぞ、そこを人が歩いているなんて不思議だな。むこうの丘には赤い家々が幾列も建っている。男の人がひとり、すぐ後ろに犬を連れて橋を渡る。
赤い服を着た男の子が雉きじ打ちを始めたぞ。すると青い服の男の子がその子を押しのける。『僕の叔父さんはイギリス一の射手さ。僕のいとこはキツネ狩りの親方なんだぜ。』自慢話が始まる。でも僕は自慢できないんだ、僕の父親はブリスベーンの銀行家で、僕にはオーストラリア訛りがあるから」
「ひどい喧噪を経て」ネヴィルは言った「とんでもない人混みと喧噪をくぐり、僕たちは着いた。待ちに待った瞬間、本当に厳おごそかな瞬間だ。僕は入っていく、城主に任命された貴族が、館の大広間に入っていくように。
あれは創設者だな、有名な創設者だ、中庭に片足を挙げて立っているぞ。挨拶をしよう。高貴なローマ時代の雰囲気が、この簡素な中庭には漂っているな。教室にはすでに灯りがついているぞ。あれは多分実験室だな、そしてあれは図書館。そこで僕はラテン語の精密さを探求し、見事に書かれた文章をしっかりと味わい、ウェルギリウスやルクレティウスの明確で格調高い六ヘクサメトロス歩格詩を音読するんだ。
そして、くすんだりぼやけたりしたところなどまったく無い情熱を込めて、カトゥルルスの愛の歌を詠唱するぞ、大きな本、余白のある四つ折り本を広げながら。僕はまた、草のちくちくする野原に寝そべるんだ。友だちと一緒に、高くそびえるニレの木の下に。
「見よ、校長先生を。ああ、僕の冷笑を買うとは。肉付きが良すぎるし、衣服はあまりにてかてか光って黒ずみ、公園の銅像みたいだ。そしてチョッキの左側、ぱんぱんに張った太鼓腹の左側には十字架がぶら下がっているぞ」