はじめに

以前、私の働いている歯科医院になかなか痛みの取れない患者さんが来院されました。この患者さんを診ているうちに、この方は実は、身体の調子も悪いことに気づきました。

「身体の調子が良くなれば、歯の痛みも止まるのになあ」と思いましたが、当時はなす術がありませんでした。そこで私が、身体全体にアプローチできる方法がないものかと探して、出合ったのが「気診」です。

「気診」とは、人の身体の内外に存在する気の診断をするというものです。早速、半信半疑でその講習会に参加しました。初めのうちは、言葉や内容、やっていることさえもまるでわからない世界でした。

しかしよくわからないけど何となく気持ちいい……そうして私はこの「気診」についてもっと学びたいと思うようになったのです。

空気や気体、雰囲気、気分、元気……気を使った言葉はたくさんあるにもかかわらず、人間の身体が目に見える肉体と、目に見えない「気」の身体でできていることは、まだ多くの人に理解されていません。

そこで私は「気診」の創始者である小田一先生の門を叩き、先生の地元、兵庫県加古川で勉強を始めました。

先生のところで四、五ヶ月ほど研修し、先生の「気診」を目の当たりに見学し続けているうちに、次第に患者さんを取り巻く周囲の気が変わることに気づきました。

気というものは目に見えるわけではないのですが、小田先生が気を入れると、患者さんは身体全体が霞がかかったような具合の悪い状態から、さっと晴れ渡るように周囲の気がクリアになって元気になっていくのが、「気診」の検査方法で診るとわかりました。

その時初めて、私は身体の周囲の「気」の存在をつかむことができたのです。

人間の身体の「気」は様々な要因から影響を受けています。暑さ、寒さといった自然環境から食べ物、飲み物、冷え、疲れ、電磁波、さらには気持ちの変化などなど、気に影響を与える要因にはあらゆるものがあり、その影響を受けて気は容易に変化します。

したがって身体の健康を保つために、呼吸法で呼吸を調(ととの)えたり、冷えている身体を温めたり、調和のとれた考え方をしたりすることで、自分を取り巻いている気の身体と目に見える身体を健康な状態に変化させることができるのです。

このことから、気は人間の一部であり、さらに人間は気をとらえる能力を本来持っているのだということがよくわかります。ところが、頭でばかり考えている現代の人々は、気をとらえる能力が減退しているようです。

自分で「気診」ができるようになるためにはしばらく修行が必要ですが、様々なことに応用できます。

例えば私の診療の中で、患者さんの気の状態を把握できることは、臨床にはとても役に立っています。また私が「気診」を臨床に取り入れてから、色々なことに気づくことができました。

この書では、「気診」のことと、私が臨床で気づいた元気になる方法、そして気持ちの持ち方について書きました。この書を読んでくださる方が、一人でも多く、ご自身で気を調えて、元気で快適な日々を送って頂けたら幸いです。