六 午後……十二時五十五分 ドリームアイ・ゴンドラ内

「何?」

『君が、警察に実名で通報するんだ。そうすればこの事件の指揮を執っている刑事に繋がるはずだ。警視庁捜査一課の貝崎啓一に』

「……!」

まさか、と仲山は驚く。ここで貝崎の名前が出てくるとは思わなかったのだ。仲山は貝崎とは面識があった。というより、お互いによく知る仲なのだ。ここ五年は付き合いがないとはいえ、まだ縁が切れた人物とはいえない。

この犯人は、自分と貝崎に面識があることを知っているのだろうか?と仲山は不審(ふしん)に思った。

仮にもし知らなくても、仲山と貝崎が会話すればそれは自(おの)ずとわかってしまうだろう。隠し立てしても仕方がないと仲山は判断した。ここまでの経緯から、このゴンドラ内の会話は全て『小人』に聞かれていると思って間違いないと仲山は思っている。だから、敢えて斬り込んでみることにした。

「貝崎は俺の同期だ」

『同期?ということは、君は警察関係者か。……まあ、さっきのあの子との会話でそんな雰囲気ではあったな。そうか、それもまた運命か……』

違う、と仲山は心の中でそれを否定する。ここまでの偶然があるものか、と。

観覧車ジャックは緻密な計画の上に基づいているはずだ、と仲山は考えている。即ち、仲山がここにいることは運命ではなく必然である可能性が高い。そこで、仲山は今日ここに来た理由を思い出した。