この文章とともに画像が添付されており、原田はこの画像を再生すれば吉村と話ができると悟った。そして、思ったとおり添付画像には電車が走る映像が流れ、そこに吉村の顔が映し出された。その吉村に向かって、原田は先に口を開いた。
「なぜ田端が俺を殺そうとしたんだ。話が違うだろ!」
「違わないよ」
イラついた原田の言葉に、吉村は淡々と答えた。
「原田くんは、田端くんたちを殺す気がなかったんだろ。きみの行動や思いは、僕には手に取るようにわかるんだ。だから、僕は田端くんに殺人を委ねることにした。前から何度も言っている話じゃないか」
「だからって、吉村が死ぬ時に俺が駅のホームでイジメを見ていたっていうようなウソを流して田端を焚き付けるなんて、おかしいだろ!」
この原田の言い分に、吉村は深い溜息をついて言った。
「あのさ、原田くんもいい加減に思い出した方がいいよ。きみは僕が線路に落ちるところを見ているんだ。いい人ぶって忘れるのもたいがいにしてほしいよ」
そう言われた原田の脳裏に、田端に言われた時と同じように、駅のホームで田端と福井が吉村を囲んで何か言っている姿が浮かんできた。その映像を否定するかのように、原田の口からは言葉が漏れてくる。
「いや、俺は何も見ていないんだ。俺は……何も知らない!」
そんな原田にスマホの中の吉村は呆れ顔で言う。
「とにかく、次は福井くんと遭遇するから。僕が福井くんのスマホに指示出すし」
「ちょっと待った! それが不思議なんだ。なぜ、おまえが、田端とか福井のラインに入れるんだ? アドレスとかわからないだろ!」
「わかるよ」
吉村は笑顔で言う。
「最初はわからなかったけど、奈美ちゃんがスマホで電車を撮ってくれてからOKになったのさ。奈美ちゃんのスマホから原田くん、きみのスマホに移動して、そのスマホからきみが連絡取った藤川くんのスマホに移動して、
その藤川くんのスマホから今村くんのスマホ、今村くんのスマホから田端くん、そして福井くんと、電話番号がわかって電波が通じれば移動できるんだよ、霊体だから」
この言葉に原田は肩を落とした。吉村が奈美を誘惑したのは原田を焚き付けるためだけではなく、スマホの侵入経路を確保するためだったのだ。
(どうしたらいいんだ俺は……)
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