一樹は、私の急な異変に気づき心配してくれた。
メル友だったのもあり、一樹にはメールのやりとりの中でりょうくんとの出来事は簡単には話していた。
でも、一樹も戸惑ったと思う。
私は嫌われたくないから我慢しなきゃと必死だったが、身体の震えや恐怖感は止まらず、冷静さを失ってしまった。
一樹とこれからも一緒にいること、まともに男の人と付き合うことはできないのだと全身で痛感させられた瞬間だった。
そして、好きなのに触れられるとフラッシュバックが起きるという、自分ではコントロールができない事実に絶望し、遅かれ早かれこれが理由で一樹は私から離れていくに違いないと思った。
一樹は、何度も私に謝り「ごめんね。急がなくていいよ、少しずつ慣れていければいいんだよ」と言ってくれたが、その日の私はその言葉を鵜呑みにはできずにいた。
初めてフラッシュバックという経験をし、こんな恐ろしい感覚が簡単になくなるわけがない、慣れる日なんてくるはずがないと、帰りの電車の中で初めての体験と絶望に涙が出そうになった。
これがキッカケで嫌われたのではないか。私は好きな人と触れ合うことも結ばれることすら、一生無理なのではないかと、とにかく絶望した。
ただ一樹と付き合い始めてから「学校は休むのに彼には会いに行くんだね」の、前にも似た母の嫌味のような言葉に、言い返すことはできなかったが、初めて母の言葉に抵抗した。
友達のときはその言葉をキッカケに遊ぶのをやめたけれど、私は一樹と会うことだけはやめなかった。