メールの内容を知っている母はあっさり承知してくれたが、一回りも年上で、訳あってまだ大学生だった当時24歳の彼と会わせることに、やはり父は猛反対だった。
でも私は諦めず、どうしても会いたいとお願いすると、父が「実家はどこなのか。大学はどこなのかを教えてほしい」と条件を出した。
父が反対している旨を話し、一樹は「信頼しているので言いますね」と、実家の場所や大学の名前を偽りなく書いて返信してくれた。
父もそれでようやく会うことを承知してくれたが、待ち合わせ場所は電車で少し遠く、初めて行く駅だったのと、安全のためにそこまでは母と同伴した。
そして当日、約束の時間通りに一樹は来た。
挨拶を交わし、帰る時間を決めて、母は立ち去ったが、一樹の第一印象は、本人に言ったら怒られるかもしれないが、あまりタイプの顔ではなかった。中学生の男の子たちしか知らない私にとって、24歳の一樹は、恋愛対象には遠いような気もしていたし、地元の田舎ではなく、都会で会っていることもあってか、どこか大人の男の人という雰囲気だけを感じた。
「どこで食事しようか?」と言われたが、初めて都会に来た私は右も左も分からないので、お店は一樹にお任せした。
そして、近くのレストランで食事をしたのだが、私は緊張しすぎて空腹感がなかったため、一応注文したパスタをほとんど残してオレンジジュースだけ飲んでいた。
一樹は、メールから想像する人柄とまったく変わらず、メールで話していた話題など一生懸命話しかけてくれた。
その頃の私は表情が読めない人形のような感じだったので、今思うととてもそっけない愛嬌のない女の子に映っただろう。
コップの水が空になったのに気づいた一樹が、コップに水を注ごうとしてくれたけれど、緊張していたのか水が溢れてこぼれてしまった。