店員さんが声をかける方向を見ると、早速キャバ嬢であろう派手な格好をしたギャルの二人組が入ってきた。

「こんばんわー」

ほろ酔いなのかすでに上機嫌だ。

いきなり話しかけに行ったら、がっついてる感じが出て嫌われる。まずは様子見だ。ギャル達は、カウンターにいる僕らから離れたソファー席に座った。

さあ、どうしようか。

店員さんのフリして、おしぼりを持っていき、店員さんにツッコんでもらうか。いや、いきなり攻めすぎるのはリスクが大きい。女の子達がノリが悪かった場合、とんでもない空気になる。

それに失礼な話だが、見た感じこの女の子達はそんなに可愛くない。もし、ここにターゲットを絞った場合、後からもっと可愛い女の子が来たときに後悔する。

そんなことを考えてる間に、そのギャル達の隣りにいた男のグループが話しかけた。

「オレらと乾杯してもらっていい?」

「いいよー。飲もうー」

ノリがいい子だ。もうあのギャル達は取られた。最終奥義「カラオケで盛り上がる曲を入れて、店全体を巻き込んで盛り上がってる隙に、ちゃっかり女の子の隣に座る作戦」をしない限り、もう無理だ。

でも今はゴールデンタイム。キャバ嬢達は無限にやってくる。

カラン、カラン。二組目の女の子がやってきた。キャバクラ終わりなのだろうか、またギャルの二人組。

しかも最初に来たギャルより、レベルが高い。一瞬、色めき立つ男達。そして、少し悔しそうな顔をする、最初のギャル二人組に話しかけた男グループ。

その子達は、あのデブなのにホストみたいな髪型をしているヤツの近くのソファー席に座った。

ここだ。もう話しかけに行くしかない。オタオタしていたら、よりにもよって、あのデブホストに盗られてしまう。

僕は、新一郎の肩をポンッと叩いた。だが新一郎の反応がない。

新一郎は、寝ていた。

バイトの疲れが溜まっていたのか、二時までに気合入れるために飲み過ぎたのか。そういや前日も麻雀で徹夜したと言っていた。ゴールデンタイム前になにしてるんだ。新一郎らしくない。僕一人で戦うしかないのか。

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次回更新は12月31日(火)、18時の予定です。

 

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