僕の大学デビュー天下取り物語
すぐに新一郎たちにも報告して、祝福してもらった。こんな僕のために朝までカラオケのパーティールームを貸し切って、祝い酒を飲ませてもくれた。みんなで尾崎豊の卒業を歌ったとき、僕は抱きしめたくなるくらい新一郎たちに感謝した。
そしてこんなに根気強く、僕の童貞卒業に付き合ってくれた亜里沙にも感謝したし、気が付くとちゃんと好きになっていた。順序が逆になったかもしれないけど、ちゃんと亜里沙に告白しよう。
僕はそう決めて、亜里沙に連絡を取った。
話があると、亜里沙を夜中ファミレスに呼び出した。
亜里沙はスウェットにすっぴんというラフな格好で現れて、僕はこんな大事な話をしようとしているのにと思ったが、それも亜里沙らしくて微笑ましかった。
正直、僕はもう付き合ってる気分でいた。
二人でデートもして、何回も亜里沙の家に行ってたし、なにより三回もセックスを失敗した僕を見捨てずに、成功まで導いてくれた。僕のことを好きじゃないとそんなことはできないはずだと。
後は照れくささを乗り越えて話を切り出すだけだと、なんてことない会話から糸口を探していたところで、急に亜里沙が思いもよらないことを言ってきた。
「そういえば、うち彼氏ができた」
「えっ?」
まさに青天霹靂だった。一瞬、本当に世界が止まった。
「サーフィン部の先輩でさ、ちょっと前から良い感じだったんだけど……」
全く理解ができなかったが、とりあえず亜里沙の話を聞くと、僕が亜里沙の家に行っていたときも、別の日は先輩が家に来たり、先輩の家に行っていたらしい。
「ちょうど昨日かな、もう付き合おうかって話になって」
「そ、そうなんだ。え、付き合ってんなら、今これ二人で会ってるのとか大丈夫?」
混乱してる頭でなんとか言葉を紡ぐ。
「うーん、そうだね。もう二人で会うのはやめた方がいいかも」
頭の中にはクエスチョンマークが浮かぶ。いい感じなら、なんであんなに俺の童貞卒業に付き合ってくれたんだ? その言葉をぐっと堪える。その言葉を吐いちゃったら、なんか女々しく映るんじゃないかとか、ガッカリされるんじゃないか、そんな恐怖を覚えた。
「まあ、また今までみたいにみんなで遊ぼうよ」
結局、そこかドリンクバーを2杯ほど飲んで解散した。その間は先輩との馴れ初めや、サーフィンをしているときの先輩がいかにカッコいいかという惚気話を聞かされた。
なんでこんな話を僕にするのかも意味が分からなかったし、僕はぼんやりと、「ああ、これが噂で聞いていたビッチというやつなんだろうなー」と思った。