僕の大学デビュー天下取り物語
新一郎は見た目やセンスがよく、高身長や関西人ならではのノリの良さでとにかくモテたし、一緒にいると僕もおこぼれ的においしい思いもできていた。
看護大のミスコンのお姉さんとのコンパも、新一郎のアシストで僕はその日のうちにホテルに行くことができた。綺麗な方だったので舞い上がっていたが、結局そのお姉さんもいわゆるビッチだったのだろう、僕の他に四人セフレがいることを後で知った。
そのときも少し凹んだが、亜里沙の件で耐性がついていたし、まだあのときほど好きになるような期間もなかったので、ダメージは少なく済んだ。諦めたり傷ついたりしながらも、経験人数だけは増えていった。
全然タイプじゃない子とも体を重ねた。とりあえず色々な女の子を経験することが、亜里沙やその看護大のお姉さんを忘れる近道のような気がしたからだ。
僕は新一郎のように強く、図太くなりたかった。満里奈と初めて会ったのは、そんなときだった。
宮崎の中心街には夜十時から朝六時までずっと飲み放題で三千円という嘘みたいな価格のバーが何軒もあった。僕が新一郎とよく行っていた「Z」というバーもその一つだった。
しかもそこは、深夜二時になると、営業を終えたキャバクラ嬢が集まる楽園のようなところだった。仕事でもお酒を飲んでいるキャバ嬢は大体ほろ酔い状態で、声をかけてもノリが良い子が多い。男達にはとっては最高、最強のナンパスポットだった。
僕と新一郎も狂ったように通っていた。お持ち帰りみたいな奇跡もたまにあったし、そもそも朝までキャバ嬢達と三千円で盛り上がれるだけで、もう十分だからだ。
その日も新一郎と共に「Z」に来ていた。新一郎のバイト終わりに合流したため、二十四時くらいに「Z」には入ったが、お客さんは男性だけだった。あまり広くない店内に、僕らの他に二・三人のグループが三組くらいいてみんなソワソワしていた。
みんな待っているのだ。これから訪れる深夜2時からのゴールデンタイムを。新一郎も獲物を待つ狩人のような目をしていた。
僕はこれから来るゴールデンタイムを上手く立ち回るためにも、カウンターでいつもの店員さんに話しかけて、世間話をしながら媚を売った。
こういう場において店員さんと仲が良くなっておくことは絶対にアドバンテージだ。店員さんが女の子に僕らを紹介してくれたりする。
僕はそのためだけに、このタトゥーまみれの店員さんが副業で販売している、デカくてイカつい変な服も2着、買っているのだ。
深夜2時までソワソワしながら、中身のない会話で時間を潰す。
「そろそろやな」
近くのソファー席にいたグループの1人が呟いた。今夜のライバル。デブなのにホストみたいな髪型をした一番嫌なタイプのヤツだ。
こいつにだけは負けたくない。デブなのにチャラい髪型をしているのは一番嫌だ。チャラい髪型をする前にまず痩せろよと思ってしまう。デブは努力で直せるのだから。
時間を見ると、二時を回っていた。
カラン、カラン。店の入店のベルが鳴る。
「いらっしゃいませー」