その相手がなんとユンだったのです。お互いに驚き、飛び上がりましたが、先に口を開いたのはジンでした。
「世子様、私は学問を究めたいがばかりに許されないことを致しました。どうか私を罰してください」
嗚呼、もう自分は終わりだと思い、どうせ終わるなら抵抗せず騒ぎ立てないようにしようと、ジンは自分を落ち着かせて言いました。人を呼ばれ、連行されるのだと思っていましたが、何故かユンの方が異常に動揺し、恥ずかしがっているようにも思えました。ジンはその意味を理解して、少しするとユンが口を開きました。
「そなたの熱心さは分かった。然し、ただで帰すわけにはいかないし、今後もこのようなことがあっては困る」
そう言うとユンは続けました。
「そなたが読みたい書物は私が取りに行こう。その代わり今日のことは誰にも口外しないでくれ」
ユンは書庫に春画を隠し、夜になるとこっそりそれを眺めに来て楽しんでいたのです。ここで二人は秘密を守るように男の約束を交わしました。その時以来、悩みを相談し合ったり、互いを認め合ったりして絆を深めるようになったのです。互いが互いの素の部分を受け入れ、時にはユンから勉強会に誘ったり、ジンから春画をプレゼントしたりしたこともありました。
話を戻しまして、屋敷の庭では真新しい着物を着た小太りの男の前で、みすぼらしい身なりの農民達が頭を地面に打ち付けながら何かを懇願しているようでした。「我々は生活を犠牲にしてでも旦那様に作物を納めてきました。ですが、悪天候が続く中で更に税率を上げられるのは耐えられません」
「どうかお願いします。そこまで搾取してお偉いさんは我々に一体何をくださるのですか。我々が何者であろうとも過剰な取り立てには納得できません」
魂の叫びを放つ農民達を男は冷徹な眼差しで見下ろし、その訴えを無残にも跳ね除けました。
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