Ⅰ 幼児のころ 1987~1990年

満1歳「いいからぁ」“いやや”からやんわり拒絶に

10月7日 十五夜~12日

夜はお月見と、けいたが回復してささやかな祝宴。けいた「かんたーい!」と、3人してコップを合わせる。缶ビールの空き缶を逆さにして、菜箸をつっこんでコマのように回して遊んでいる。夫婦で迎えた3回目、3人で初の十五夜、お月見体験。

10月19日~26日

自分でみがくように歯ブラシを渡したら、投げてから足でふんづけた。もう一度渡すと、いつのまにかFFストーブの陰にかくした(?)。父「ハブラシはどこにやったの?」けいた「う、?」1歳3か月でとぼける?

21日の朝、目がさめると初雪。突然の一面まっ白な雪に、けいたは「アワワ、ワウア、アワァワ」と、驚きあわてている。父「これは“雪”と言うんだよ」窓外のオンコ(イチイの木)に積もったきれいな雪を渡すと、いきなり口に入れてしまった。雪の味初体験。

幼児用のハブラシを泣きながら母に差し出した。代わりに大人用のハブラシを受けとると、泣き止んで自分で歯をみがいた。串から外したヤキトリをあげると拒否。串のまま渡したら、ニコニコしながら食べた。

食事はスプーン、フォーク、手づかみで、すべて自分で食べる。服を着るのも、くつ下をはくのも、くつも自分ではこうとする。極力手出ししない、と思う間もなくカレーの入ったお皿をひっくり返して割ってしまった。

10月27日~11月3日 文化の日  【1歳3か月】

3日文化の日の朝、父は布団の中。しびれを切らしたけいたが父のシャツとジャージを持ってきた。いつまで寝てるの、とばかりのけわしい顔。

そして、お出かけ。旭川美術館の木喰の像を見て、「ぱぱ ぱぱ」。帰宅後、父が玄関前に車庫を作るための穴掘りをしていたら、けいたも声を合わせて手伝い。寒い中、けいたのズボンは雨と泥まみれ、本人は親を手助けしてうれしいらしい。その姿に親はしみじみ。

11月10日~18日 

柿を食べた後、母がうっかり居間のテーブルに包丁を置いたままにしてトイレへ。数分後、けいたが包丁を手にトイレにやってきた。焦った母はすぐに包丁を取り上げた。けいたはトイレの床にひっくり返って泣いておこる。タイヘン、タイヘン。

父が食事の片付け。けいたは手伝いしようと、ノリのびんを父に「はい」と渡そうとした瞬間、滑ってテーブルの角に口を強打、唇の内と外を切って血を流した。スローモーションで見るような出来事にぼう然……。

朝食後、父の靴と自分の“くっく”を持ってきて、外にいこうとお誘い。外は霜柱が立って冷えるが、けいたはとてもうれしそう。元気よく表に出た瞬間、家の前の凍った坂で滑って、鼻とおでこに切り傷とすり傷。