第三章 隣る人
多様性
例えば、私は犯罪被害に遭われた人たちの支援をしています。その際に当事者の方が「犯罪被害者というレッテルを貼らないでください。私たちには犯罪被害者だけではないさまざまな側面があります」と説明されることがあります。
つまり、私は犯罪被害に遭ったけれど、日本人で、○○県出身で、女性で、職業を持っていて、旅行が好きで、活発で ……という複数の側面を持っている多様性のある一人の人間なので、犯罪被害者としてだけの目線で接しないでくださいという意味を含んでいるのだと思っています。
一人ひとりはそれぞれ違います。生まれた国も、場所も違います。育ってきた家庭も、学校も、地域も違います。家族も、友だちも、同僚も違います。姿、形も違います。考え方、価値観、性格、趣味、嗜好も違います。持っている知識、経験、技術、智慧も違います。
一人の人間の中に多様性が存在します。だからこそ、本当の多様性は「whole(まるごと)」の存在を受け入れることを目指すことにあるのではないかと思います。