「そういうことなら、うちらにもう用はないな。帰らせてもらう」
「管理官、お待ちください。今後の捜査方針の指示を」
「そんなものは要らんだろ。所轄で勝手にやれば」
そう言うと大石は、部下とともに早々に刑事課を出て行った。
佐伯は去っていく大石の背中を見つめながら頭を下げた。
「課長、マズイですよ。一課を敵に回すと今後の仕事がやりにくく」
「そんなのわかってる!」
佐伯は城島の言葉を遮り大声を張り上げた。
「とりあえずはホシを送検するまで加藤に調べをさせろ。その後は考える」佐伯は自席に戻ったあと、腰を下ろして頭を抱えた。
その二日後、佐伯は被疑者を送検した旨の報告をしに署長室に足を運んだ。「署長、入ります。佐伯です」
「入れ」
佐伯は署長室に入ると、木下は報告書類に目を通していた。
「署長、無事に被疑者を本日送検しました。事実関係も認めておりますし、起訴は確実かと」
「一課長から電話が入ってな。今回の一連の動きに対してのお叱りを受けたよ」木下は書類から目を上げずに声を発した。
「申し訳ありません。あれは加藤が勝手にしたことで」
「課長な、部下が勝手にしたことであっても全責任は課の長たる君が負うんだよ。それくらいはわかっていると思ったんだがな」
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