11.EGAMI 小説記憶人
ラ・エンカと兄
一方、ラ・エンカは、大幻透視師ミヤンから教わったエデンの花の生息地に向け旅を続けていた。
エデンの花は開眼の実と言う名の実が生り、その実を食べると知りたい情報を頭の中で見る事が出来た。エデンの花の生息地は毎年変わり、見付けるのが困難の為、幻の花と言われていた。
一説では、エデンの花が咲く上空には、記憶の森があり、その中心に在ると言われるクレアーレの泉から滴り落ちた水からエデンの花が出来るのではと噂されていた。
太陽の国と地の国の境に山脈が連なっていて、その山の中腹をラ・エンカは、導き蜂を瓶に入れ歩いていた。蜂にはミヤンから教わった場所の情報記憶を入れ先導させていた。
ラ・エンカは多くの仲間と別れ、彼女を慕う忠実な二人の部下だけ連れ、エデンの花の生息地に向かっていた。
ラ・エンカは、もう魚の仮面を被る事はなかった。雲海にいる時は、零族狩りとして顔を隠し行動していた。
生活の為と兄を捜す為、零族狩りになったが、元々ラ・エンカは、火の国と言う山岳にある小国の王女だった。10才になって直ぐの幼い頃、国はカーの襲来を受け両親はカーの犠牲となった。多くの人々が記憶をなくし国は崩壊した。
ラ・エンカは、兄と生き残った女家臣チナンと逃げ、三人は小さな島で細々と暮らしていた。
チナンは二人を甘やかす事なく、二人が何でも出来るように、時にやりすぎだと自分でも思うくらいに厳しく育てていた。チナンは二人が、自分で自分を守れるようにと剣術を教えていた。
しかし二人はチナンが厳しすぎて好きになれなかった。特に兄のアッカトはチナンに反発し言う事を聞かなかった。
そんなある日の事、ラ・エンカは剣の修行の帰り道、倒れている老人を見かけた。駆け寄ると、苦しそうだったので持っていた自分の水筒の水を飲ませた。